[ ファイルNo.3 ] ホテル業界のパラダイムシフト
そのホテルが変わり始めたのは、今年の8月のことだった。
ある往年のホテリエが、総支配人という役職で就任したのがきっかけだった。
その60代半ばを迎えるホテリエは、一度リタイアメントを経験したが「どうしてもうちに来てホテルをよみがえらせてほしい」と懇願されて、いわば強引に引っ張り込まれた。
ホテリエは、このくらいの厳しい条件を提示したら向こうから断ってくるに違いないというくらい厳しい条件を突きつけたにもかかわらず、予想外にその条件を受け入れられてしまったため、その申し出を引き受けた。
8月に就任するとすぐにリブインした。
朝5時にベッドを出ると街を30分ほどウオーキングする。
6時30分にはコーヒーショップに出向き、サービスにあたる。忙しいときは率先して皿を下げる。
エレベーターでゲストに会うと、必ず名乗り、「ご滞在はいかがですか。困ったことはありませんか」と声を掛ける。
毎朝開かれるマネジャークラス以上の役職者対象のモーニングブリーフィングでは、米国屈指のホテル運営企業で数十年マネジメントに当たってきたときに体得したマネジメント手法、考え方を、とくとくと伝える。
8月の就任からずっと続けているラップセッションというスタッフとの個人面談では、とにかくその人を知ることを心掛けるという。会社の方針を一方的に伝えるとか、「君はもっとこういうことをしないといけない」という押し付けではなく、その逆をやる。その質問はプライベートな部分にまでおよび、1時間の会話が終わるころには、気心の知れた仲になる。もう100人以上やっていて、ホテリエは全員の名前を覚えることに腐心している。
「とにかく、僕らを尊重してくれているというか、話を聞いてくれるんです」
「今までは、失敗すると怒られました。怒られることを避けて、やらなければいけないことと分かっていてもやってこなかったことを、やれるようになりました」
「現場は最少人数で回しているんです。でも、すごく忙しいときピッチで連絡するだけで、上の人たち(マネジメント人材)がヘルプに来てくれるようになって、ホント、守られているって思うし、温かい気持ちでサービスすることができるんです」
これまで、つまらなそうな顔をして作業として仕事をこなすだけだったネガティブシンキングのスタッフ達が、こんな発言をしたのを私が聞いたのは、ホテリエが主催し、自らスピーカーとなって行なう「GM塾」でのことだった。
「GM塾」は、全スタッフが対象の勉強会で、毎週一回、一時間だけ開催される。ここでもホテリエは一方的に伝えるのではなく、双方向のコミュニケーションを務めていた。
「『言ったじゃないか』は、コミュニケーションとは言えない。伝え、伝わっているかを確かめるまでが、上司の責任です」
私は、このホテリエがリタイアしていたころに知り合って、日米ホテルのレベル格差などの話をよく聞かされていた。彼がリーダーだったら、現場は変わるだろうなあとは思っていたが、正直、ここまで短時間で組織が変わるとは思っていなかった。
ホテリエにそのことを伝えると、こんなことを熱く語ってくれた。
「新しく来た人間が、上から頭ごなしに命令したって、だれも動きはしないんです。まずは受け入れられることが肝心。そのためには、現場に入り、同じ目線になって、同じ苦労を感じる。みんなを尊敬し大事に思ってあげることです」
これまでのホテル業界は、封建制度であり、縦社会であり、上下関係が絶対の世界だった。上からの指令は絶対であり、下の人間は、大げさに言えば人間扱いされなかった。でも、それでは人は当事者意識をもたない。指示されたことをこなすだけ。楽しくないし、モチベーションは上がらないし、第一、楽しく仕事をしていないサービスマンにサービスされるお客さまがハッピーではない。
マネジメントサイドが上に立つのではなく、現場に入って現場のスタッフをサポートする。大切に思って、それを態度で示す。実践する。
このパラダイムシフトをするだけで、ホテルはみるみる活性化する。
ある往年のホテリエが、総支配人という役職で就任したのがきっかけだった。
その60代半ばを迎えるホテリエは、一度リタイアメントを経験したが「どうしてもうちに来てホテルをよみがえらせてほしい」と懇願されて、いわば強引に引っ張り込まれた。
ホテリエは、このくらいの厳しい条件を提示したら向こうから断ってくるに違いないというくらい厳しい条件を突きつけたにもかかわらず、予想外にその条件を受け入れられてしまったため、その申し出を引き受けた。
8月に就任するとすぐにリブインした。
朝5時にベッドを出ると街を30分ほどウオーキングする。
6時30分にはコーヒーショップに出向き、サービスにあたる。忙しいときは率先して皿を下げる。
エレベーターでゲストに会うと、必ず名乗り、「ご滞在はいかがですか。困ったことはありませんか」と声を掛ける。
毎朝開かれるマネジャークラス以上の役職者対象のモーニングブリーフィングでは、米国屈指のホテル運営企業で数十年マネジメントに当たってきたときに体得したマネジメント手法、考え方を、とくとくと伝える。
8月の就任からずっと続けているラップセッションというスタッフとの個人面談では、とにかくその人を知ることを心掛けるという。会社の方針を一方的に伝えるとか、「君はもっとこういうことをしないといけない」という押し付けではなく、その逆をやる。その質問はプライベートな部分にまでおよび、1時間の会話が終わるころには、気心の知れた仲になる。もう100人以上やっていて、ホテリエは全員の名前を覚えることに腐心している。
「とにかく、僕らを尊重してくれているというか、話を聞いてくれるんです」
「今までは、失敗すると怒られました。怒られることを避けて、やらなければいけないことと分かっていてもやってこなかったことを、やれるようになりました」
「現場は最少人数で回しているんです。でも、すごく忙しいときピッチで連絡するだけで、上の人たち(マネジメント人材)がヘルプに来てくれるようになって、ホント、守られているって思うし、温かい気持ちでサービスすることができるんです」
これまで、つまらなそうな顔をして作業として仕事をこなすだけだったネガティブシンキングのスタッフ達が、こんな発言をしたのを私が聞いたのは、ホテリエが主催し、自らスピーカーとなって行なう「GM塾」でのことだった。
「GM塾」は、全スタッフが対象の勉強会で、毎週一回、一時間だけ開催される。ここでもホテリエは一方的に伝えるのではなく、双方向のコミュニケーションを務めていた。
「『言ったじゃないか』は、コミュニケーションとは言えない。伝え、伝わっているかを確かめるまでが、上司の責任です」
私は、このホテリエがリタイアしていたころに知り合って、日米ホテルのレベル格差などの話をよく聞かされていた。彼がリーダーだったら、現場は変わるだろうなあとは思っていたが、正直、ここまで短時間で組織が変わるとは思っていなかった。
ホテリエにそのことを伝えると、こんなことを熱く語ってくれた。
「新しく来た人間が、上から頭ごなしに命令したって、だれも動きはしないんです。まずは受け入れられることが肝心。そのためには、現場に入り、同じ目線になって、同じ苦労を感じる。みんなを尊敬し大事に思ってあげることです」
これまでのホテル業界は、封建制度であり、縦社会であり、上下関係が絶対の世界だった。上からの指令は絶対であり、下の人間は、大げさに言えば人間扱いされなかった。でも、それでは人は当事者意識をもたない。指示されたことをこなすだけ。楽しくないし、モチベーションは上がらないし、第一、楽しく仕事をしていないサービスマンにサービスされるお客さまがハッピーではない。
マネジメントサイドが上に立つのではなく、現場に入って現場のスタッフをサポートする。大切に思って、それを態度で示す。実践する。
このパラダイムシフトをするだけで、ホテルはみるみる活性化する。

1 Comments:
soupさん
コメントありがとうございます。
私がいまかぶれている星野リゾートの星野社長が、NHKの「プロフェッショナル」で紹介されていたことがありました。そこでは旅館再生をしているときみ、社長自らがまず全スタッフと面談をして、どういう悩みをもっているのか、どしていきたいのかということを親身になって聞いていらっしゃいました。私の知り合いのあるホテルウーマンはその映像をみて涙したそうですが、自分たちと同じ目線になって親身になって話を聞くことの意味は大きいですよね。
現場を知ることは基本中の基本です。
スタッフが一番お客様のことを知っているし、知れるのですから。
By
近藤寛和, at 12:07 PM
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